【Gaussian】Avogadroを使ってHOMO-LUMO・静電ポテンシャルを描写しよう①計算結果から簡単解析!

【Gaussian】Avogadroを使ってHOMO-LUMO・静電ポテンシャルを描写しよう①計算結果から簡単解析!

この記事は、Avogadroを使用してHOMO-LUMO軌道や静電ポテンシャルを描写する方法についてのわかりやすく解説します。記事では、

チェックポイントファイルをfchkファイルに変換する方法から、Avogadroのダウンロードから解析結果を描写する手順まで解説しています。

この記事を学ぶことで、Gaussviewで行うよりも簡単にHOMO-LUMOや静電ポテンシャルマップを描写できるようになり、また、発表資料の作成に役立つスキルを習得できるので是非最後まで読んでみてください!

今回使用するGaussianおよびAvogadroは以下の目的で利用しています。

Avogadro : HOMO-LUMOの描写・静電ポテンシャルマップの描写

Gaussian : 量子化学計算の実行、fchkファイルの出力

動作検証済み環境

Windows 11(22H2), Gaussian16、Avogadro 1.2.0

Avogadroとは?


Avogadroは、分子の3D構造をモデリングし、分子座標を作成および視覚化するための無料で利用できるソフトウェアです。主な特徴は以下の通りです:

  1. 分子モデリング: Avogadroは、分子の原子や結合を直感的に配置し、3Dモデルの分子座標を構築するのに役立ちます。また、小さな分子だけでなく、タンパク質や結晶構造などの大きな系もモデリングすることができます。
  2. 多くのフォーマットのサポート: Avogadroは、多くの分子ファイルフォーマットをサポートしており、他の化学ソフトウェア(Gaussian やGAMESS等)とデータを簡単に共有できます。これにより、異なるソフトウェア間でデータを円滑にやり取りできます。
  3. オープンソース: Avogadroはオープンソースソフトウェアで、無料で利用できます。また、コミュニティによって開発され、継続的に改良が行われています。
  4. プラグインサポート: Avogadroはプラグインアーキテクチャを採用しており、さまざまな追加機能を統合できます。これにより、ユーザーは必要に応じてソフトウェアの機能を拡張できます。

総括すると、Avogadroは化学者や研究者にとって非常に役立つツールであり、分子のモデリングと計算に関する多くの機能を提供しています。特に高価なGaussviewと異なり、無料で利用できることが大きな特徴です。

また、Gaussviewでは分子画像がPNGファイルで出力できないのに対し、AvogadroはPNGファイルでの出力に対応しているため、セミナーや学会の資料作成にも有用です!

今回はこのAvogadroを用いて簡単にHOMO-LUMOの軌道や静電ポテンシャルを可視化していきます!

Avogadroのインストール


早速、Avogadroをインストールしていきましょう!

Avogadroは以下の公式サイトでダウンロードすることが出来ます。

Avogadroのダウンロードページを開くと以下のようなページに遷移するので、タブ内中央の”Download”をクリックしてください。自動的にダウンロードが開始されます。

https://avogadro.cc/ から引用

次に、ダウンロードした”Avogadro-1.2.0n-win32.exe”ファイルを開いてください。ここの1.2.0の部分はAvogadroのバージョンを示している為、変わる可能性があります。開くと管理者権限を問われる画面になりますので、許可してください。

許可するとセットアップ画面が現れます。以下の手順に従ってセットアップを進めてください。

①下の次へ(N)を押してください。

②ライセンス契約書に同意します。

③インストールオプションを選択します。ここではAvogadroのPathを自動でPCに設定してくれます。画像のように選択してください。ログインしているユーザーアカウントのみでPathを設定する場合は、3つ目を選択しましょう。また、すぐ使えるようにCreate Avogadro Desktop icon を選択しておきましょう。

④最後にインストールするフォルダを選択してください。選択後、次へ(N)を押すとインストールが始まります。

Gaussianでチェックポイントファイルからfchkへの変換方法


では次にHOMO-LUMOや静電ポテンシャルを可視化する前処理をGaussianを使って行っていきます。

HOMO-LUMOや静電ポテンシャルを描写する際に必要なのがfchkまたはfchファイルです。

chkファイルの作り方

fchkファイルは.chkファイルから変換することで作成することが出来ます。.chkファイルを持っていない場合は以下のように%chk=ファイル名.chkをGaussianのinputファイルに指定してください。

これで.chkファイルを作成できます。

また、オプションにformcheckを入れておくことで自動的にchkファイルからfchkファイルを作成してくれます。

しかし、このformcheckオプションは現在推奨されていないので、どうしてもオプションからFChkファイルを作成したいときに追加してください。この場合は、Test.FChkとしてファイルが生成されることに注意してください。

%Chk=benzen.chk
#p B3LYP/6-31G(d) Opt freq pop=npa formcheck

 benzen

0 1
C         -3.15080        2.57109       -0.00000
C         -4.24025        1.69336       -0.00000
C         -4.02484        0.31100        0.00000
C         -2.71998       -0.19363        0.00000
C         -1.63052        0.68410       -0.00000
C         -1.84593        2.06646       -0.00000
H         -3.31744        3.64052       -0.00000
H         -5.24973        2.08376       -0.00000
H         -0.62104        0.29370        0.00000
H         -1.00310        2.74550       -0.00000
H         -4.86768       -0.36804        0.00000
H         -2.55333       -1.26306        0.00000

既にchkファイルがある場合のfchkファイル作り方

それでは、次にchkファイルからfchkファイルの作り方をLinx版とWindows版のGaussianを使って、2パターン解説していきます。

  • Linx、Unix版の場合

Linx、Unix版では以下の手順で変換することが出来ます。

スパコンなどにGaussianがインストールされている場合は、スパコンのコマンドを使用して変換を行います。自身のPCにインストールされている場合でも、まずはchkファイルがあるフォルダ内に移動してください。移動方法はcdコマンドを使います。

cdの基本の使い方

cd(Change Directoryの略)は、LinuxおよびUnixベースのオペレーティングシステムで使用されるコマンドで、カレントディレクトリ(現在の作業ディレクトリ)を変更するために使用されます。このコマンドを使うと、ファイルシステム内のディレクトリ間を移動できます。以下に**cd**コマンドの基本的な使い方です:

$ cd ディレクトリのパス

このコマンドは、指定したディレクトリのパスに移動します。たとえば、fchkファイルがdocumentsフォルダに存在すると、cd /home/user/documentsと入力すると、カレントディレクトリはfchkファイルが存在する/home/user/documentsに変更されます。

fchkファイルへの変換

次にformchkコマンドを用いてfchkファイルに変換してください。

$ formchk [chkのファイル名] [fchkのファイル名]

実際には以下のようになります。

$ formchk benzen.chk benzen.fchk

benzenの文字列を対象のファイル名に変換して使用してください。これでfchkファイルが作成できたと思います。

エラーへの対処法

スパコン等で変換する際に、以下のようなエラーが出る可能性があります。

bash: formchk: command not found...
Failed to search for file: Failed to download gpg key for repo 'elrepo': Curl error (37): Couldn't read a file:// file for file:///etc/pki/rpm-gpg/RPM-GPG-KEY-elrepo.org [Couldn't open file /etc/pki/rpm-gpg/RPM-GPG-KEY-elrepo.org]

この場合、環境変数が正しく設定されていないことが原因として考えられる為、以下のように環境変数を設定してください。そのformchkコマンドを使うことでfchkファイルが作成できます。

ログインシェルがcshまたはtcshの場合:$ source /apl/gaussian/16c02/g16/bsd/g16.loginコマンドを実行して、Gaussianの設定ファイルを読み込みます。

ログインシェルがbashまたはzshの場合:$ source /apl/gaussian/16c02/g16/bsd/g16.profileコマンドを実行して、Gaussianの設定ファイルを読み込みます。

  • Windows版の場合

Windows版ではUtilitesからFormChkを選択し変換したいfchkファイルを選ぶことでfchkファイルに変換することが出来ます。

HOMOーLUMOの描写方法


分子軌道の表示

では先ほど生成したfchkファイルを使ってHOMO-LUMOを表示していきます。fchkファイルをAvogadroで開いてみてください。

fchkファイルを正常に開けることが出来た場合、[Orbital] ツールバーが自動的に開きます。

すべての分子軌道にはステータス バーが表示されます (目的のHOMO-LUMOを見つけるには、かなり下にスクロールする必要がある場合があります)。

次にステータスバーで軌道の行をクリックすると、軌道のレンダリングが迅速に作成されます。

必要に応じて、より高い軌道品質を選択して適用できます。これを行うには、ドロップダウンメニューから新しい画質を選択し、「Render」をクリックします。これらの軌道の読み込みには時間がかかる場合があります。

以上でHOMO-LUMOを表示することが出来ました。

多くのHOMO-LUMOを可視化

「Configure」を選択すると、軌道ツールバーのデフォルトパラメータを調整できます。

例えば、HOMO-5以下の軌道を見たいときはLimit orbital precalculations to..以下の数字を大きくすると計算され、表示することが出来ます。

パラメータを調整したら、ダイアログボックスを閉じる前に「Recalculation All」をクリックします。「Recalculation All」では、すべてのパラメータが再評価され、更新されます。

静電ポテンシャルマップの描写方法


静電ポテンシャルマップの表示

静電ポテンシャルマップは、分子の電荷分布やその他の電荷関連の特性を視覚化するのに役立ちます。

全体として、特定の原子の電子密度が多いか少ないかを視覚的に判断したいとします。まず、選択した分子から始めます (以下に示すのはベンゼンです)。

次に、「Extensions」メニューで「Create Surface…」を選択します。

ダイアログ ボックスが表示され、さまざまなサーフェス オプションが表示されます。「Color By:」で「Electrostatic Potential(静電ポテンシャル)」を選択し、「Calculate」をクリックします。Avogadro が静電ポテンシャルを計算した後、「Close」を選択します。

これで静電ポテンシャルが作成されました。この表面から、電子密度が最も高い場所 (赤色の多い領域) と電子密度が最も低い場所 (濃い青色の領域) を解釈できます。さらに、周囲の原子が全体の電子密度にどのような影響を与えるかを判断して比較することができます。

また、「Surface Type:」を「Electron Density」にすることで以下のような画像を得ることが出来ます。こちらではより鮮明に濃淡を表すことが出来ます。

ここでのデフォルト設定における静電ポテンシャルマップはシャープですが、「Iso Value」を小さくすることで調整ポテンシャルマップの大きさを調整することが出来ます。

表面設定の変更

静電ポテンシャル表面の不透明度は、Display Setting… > Surface 表示の横にあるレンチ🔧マークをクリックすることで変更できます。Opacityを右にドラッグすることで不透明にすることが出来、より静電ポテンシャルが分かりやすくなります。

HOMO-LUMO画像の出力方法


最後にHOMO-LUMO画像を出力していきます。AvogadroはPNGファイルで出力できることが特徴です。

今回はこのようにHOMOをLine表記で表した図をPNGファイルで出力します。まず、Create surfaceでsurface Type: , Color By: 共にMolecler Orbitalに設定しCalulateを押します。さらに静電ポテンシャルの表記方法変更でも行ったようにsurfacesの🔧マークからsurface Settingを開き、Render>Linesを生成することで以下のように表示することが出来ます。

最後にFile>Export>Graphicsを選択し、保存すればPNGファイルを生成することが出来ます。

ベンゼンのHOMOをPNG形式で出力した図

最後に


最後まで読んでいただき、ありがとうございました!いかがでしょうか。特にHOMO-LUMOの画像生成はきれいに出力できるので、発表資料の作成時に活用してみてください!

参考


[1] Avogadro 公式 https://avogadro.cc/ (参照2023-10-15)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です