【毒性予測】 VenomPred 2.0を用いた毒性予測【in silico創薬】

本記事は低分子化合物の毒性予測について書かれた記事です。2024年に公開された最新のVenomPred 2.0というツールを用いて、QSARによる毒性予測と毒性になりうる構造(Toxicophore)の予測を行います。こちらの内容が理解できると、望みの化合物の毒性、それを引き起こす可能性のある官能基を簡単にわかることができるようになります。ぜひ皆さんもトライしてみて下さい!

動作検証済み環境

macOS Ventura(13.2.1)

目次


毒性予測とは

毒性予測は、薬剤の開発や化学物質の安全性評価において重要な役割を果たします。特に、新しい薬剤や化学物質が人間や環境に与える潜在的なリスクを事前に識別し、評価することで、安全性の高い製品の開発を促進します。また、動物実験の代替として機能し、倫理的な問題の解決にも寄与するため、3Rs(動物実験の代替、削減、精緻化)の推進にも役立ちます。

in silicoにおける毒性評価については以下の二つがあります。

  1. 定量的構造−活性相関(QSAR)モデルによる予測

定量的構造−活性相関(Quantitative Structure-Activity Relationship, QSAR)モデルは、化合物の分子構造とその生物学的活性や毒性との間の数理的関係を確立する手法です。分子の物理化学的特性を示す分子記述子と呼ばれるデータを用いて、機械学習のアルゴリズムを活用してモデルを構築します。これにより、新しい化合物の活性や毒性を予測することが可能になり、薬剤の開発や化学物質の安全性評価において非常に重要なツールとなっています。QSARモデルは実験的なテストを行わずに、早期段階でリスクのある化合物を特定することができるため、時間とコストを節約することができます。

このVenomPred 2.0では、複数の機械学習モデルを利用して、特定の化学物質の毒性エンドポイント(アンドロゲニシティ:化学物質が哺乳動物で天然のアンドロゲンホルモン(テ ストステロンなど)のように働く能力、皮膚刺激、目の刺激、急性経口毒性など)を予測します。

  1. 「Toxicophores」による予測

「Toxicophores」は、化学物質が毒性を示す可能性がある特定の構造パターンです。これらは、単純で解釈しやすい方法で、副作用(ADRs)や毒性反応を引き起こす可能性のある化合物を識別するために使用されます。化学物質をこれらのアラートに対してスクリーニングすることで、潜在的なリスクを持つ物質を早期に特定し、QSARモデルの予測を補完することができます。

VenomPred 2.0では、化学物質の構造から毒性を予測するために、SHAP(Shapley Additive exPlanations)法を用いた特徴重要度分析も導入されています。これにより、毒性予測に最も影響を与える化学構造の要素を明らかにし、その情報を基により安全な化合物の設計や改良が可能になります。

この記事ではVenomPred 2.0を用いて、QSARとToxicophoresによる予測を一挙に行います。

以前に紹介したOCHEMと比べて、複数の機械学習アルゴリズムを組み合わせた予測戦略を採用しており、それぞれのモデルの予測を統合することで、より正確で信頼性の高い毒性評価を行っています。また一つのページから毒性とToxicophoresが予測できるため、非常に使いやすいです。

それではVenomPred 2.0を使って、実際に毒性予測をしていきましょう!

(-)-thelepamideの毒性予測


今回予測する化合物はこちらの論文でスクリーニングされた(-)-thelepamideにします。構造は以下です。化合物情報はこちらから。SMILESをコピーしてください。

化合物情報はこちらから。SMILESをコピーしてください。

VenomPred 2.0にアクセスしてこの構造のSMILESを記入してください。

Name, Organization, EmailEndopoint(予測したい毒性)を記入し、Predictを押してください。しばらくすると、記入したメールアドレスに毒性予測結果が送られてきます。

結果はPDFとCSVファイルで送られてきます。

PDFファイル

CSVファイル

Hepatotoxicityが57%と少し高いので、どの部位が影響しているかを予測します。

Toxicophoreによる毒性部位の予測


Toxicophoreについては1submitにつき1つしか予測できないようです。

今回はHepatotoxicity (肝毒性)にチェックを入れて、Predict Toxicophoreを押します。こちらもしばらくすると、記入したメールアドレスに毒性予測結果が送られてきます。

結果は以下のようになりました。

S(硫黄)部位、アミドの酸素の部位でHepαtotoxicityがありそうです。一目でわかり、非常にわかりやすいですね!

最後に


いかがでしたでしょうか?ブラウザ操作で簡単で、わかりやすく毒性が予測できます。皆さんも興味ある化合物の毒性を調べてみてください!以前にプベルル酸の毒性予測と治療薬への可能性の模索【in silico創薬】【ligand-based screening】【AI創薬】【毒性予測】 Toxicophores、QSARを用いた毒性予測【in silico創薬】【物性評価】 SwissADMEを使って物性を予測しよう【in silico創薬】で用いた手法とも比べて、化合物の物性、毒性も見てみて、よりより評価をしてみてください!


参考文献

VenomPred 2.0: A Novel In Silico Platform for an Extended and Human Interpretable Toxicological Profiling of Small Molecules


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