本記事は画像解析ソフトであるImageJおよびFijiのGUIについて解説する記事です。これまで紹介してきたImageJのGUIの画面について改めて解説するので、ぜひ操作してみましょう。
今回はImageJの拡張版であるFijiのGUIについて解説します。ImageJで行う場合も基本的には同様の操作になります。
FijiもしくはImageJのインストール方法はこちらの記事を参照してください。
Fiji(1.54f), ImageJ 1.54f, Windows11(22H2)
ImageJおよびFijiについて
ImageJとは、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health, NIH)で開発されたオープンソースのソフトウェアで画像処理や分析に用いられます。また、OSに依存せずWindowsやMac、Linuxで同様の操作が可能です。
ImageJで行える代表的な画像処理は以下の通りです。
- 画像の前処理(フィルタリング、平滑化、鮮鋭化、境界抽出、二値化など)
- 画像の測定(長さ、面積、強度、形状、角度など)
- 画像の解析(セグメンテーション、オブジェクト識別、自動対象検出など)
- 画像の統計解析(平均、中央値、標準偏差、相関分析など)
これらの処理はマクロやプラグインを使った自動化や機能拡張が行えます。
Fijiは、研究によく利用されるプラグインがパッケージとしてまとめられた、ほぼImageJの上位互換と呼べるソフトウェアです。
FijiのGUIについて
Fijiを起動すると、まず以下のようなウィンドウが表示されます。
このウィンドウではFileやEditといった上段のメニューバーと下段のツールバーに分かれます。
メニューバー
メニューバーは、ImageJのさまざまな機能にアクセスするためのテキストベースのインターフェースです。ここには「File」「Edit」「Image」「Process」「Analyze」「Plugins」「Window」「Help」といったメニュー項目が含まれており、各項目の下にはそのカテゴリーに属する具体的な機能やコマンドがリストされています。
特に画像解析においては、Image、Process、Analyzeの3つのメニューをよく利用します。
Image
選択すると以下のウィンドウが開きます。ここでは画像の明るさ、コントラストの調整を行います。
主な操作は以下になります。
1. 色調整
- Adjust: 明るさ、コントラスト、カラーバランスの調整ができます。また、カラー画像をグレースケールに変換するオプションも含まれています。
2. 画像の変換
- Type: 画像のピクセルタイプ(例えば、8ビット、16ビット、32ビット、RGBなど)を変更します。
- Color: RGB画像をHSBやグレースケールなど、異なるカラーモデルに変換します。
3. 画像の編集
- Crop: 選択した画像の領域を切り取り、その部分だけを新しい画像として保存します。
- Duplicate: 選択した画像または画像の一部を複製し、新しいウィンドウで開きます。
4. 画像の合成と分割
- Stacks: 複数の画像を一つのスタックとして結合したり、逆にスタックを個別の画像に分割したりする機能を提供します。これは特に、時系列データやZスタック(3D画像)の処理に便利です。
5. ルックアップテーブル(LUT)
- Lookup Tables: 画像の色表示を変更するためのプリセットテーブルを適用します。これは、特定の画像の特徴を強調したり、視覚化を改善するのに役立ちます。
Process
選択すると以下のウィンドウが開きます。ここでは画像の品質向上、データ抽出、特定のビジュアルエフェクトの適用などを行います。
主な操作は以下になります。
1. フィルタリング
- Smooth (平滑化): 画像のノイズを減少させるために使われ、画像を滑らかにします。
- Sharpen (シャープネス): 画像のエッジを強調し、より鮮明にするために使用されます。
- Find Edges (エッジ検出): 画像のエッジまたは輪郭を強調表示します。
2. 数学的操作
- Math: 画像のピクセル値に対して数学的な操作を行います。これらの操作は、画像の調整や、複数の画像を組み合わせる際に利用できます。
3. 画像変換
- FFT (高速フーリエ変換): 画像を周波数領域に変換し、フィルタリングや画像解析のための基礎となります。
- Inverse FFT (逆高速フーリエ変換): FFTで変換された画像を元の空間領域に戻します。
4. 色調整
- Enhance Contrast (コントラスト強化): 画像のコントラストを自動的にまたは手動で調整し、視認性を向上させます。
5. バイナリ処理
- Make Binary (二値化): 画像を二値化し、ピクセル値を0または1(または黒または白)に変換します。これは形状の解析やオブジェクトのカウントに有用です。
- Erode, Dilate (収縮、膨張): バイナリ画像におけるオブジェクトのエッジを修正します。収縮はオブジェクトを小さくし、膨張はそれを大きくします。
Analyze
選択すると以下のウィンドウが開きます。ここでは画像から定量的な情報を抽出し、統計的な分析を行うことができます。
主な操作は以下になります。
1. 測定 (Measure)
- Measure: 選択された領域や全画像に対する測定を行います。面積、平均輝度値、標準偏差、最大/最小輝度値など、多くのパラメータが測定されます。
2. パーティクル解析 (Analyze Particles)
- Analyze Particles: 画像内の個々のオブジェクト(パーティクル)を検出し、それぞれについて面積、周囲の長さ、形状記述子などのパラメータを測定します。この機能は、オブジェクトのカウントやサイズ分布の分析に特に有用です。
3. ラベル付け (Label)
- Label: 測定結果にラベルを付けて、どの測定値がどのオブジェクトに対応するかを明確にします。
4. キャリブレーション (Calibrate)
- Calibrate: 画像に物理的なスケール(例えば、ピクセルあたりのミクロン数)を設定します。これにより、画像の測定結果を実際の寸法に変換できます。
5. ヒストグラム (Histogram)
- Histogram: 画像のピクセル輝度値の分布を表示します。ヒストグラムは、画像のコントラストを評価するのに役立ちます。
6. プロットプロファイル (Plot Profile)
- Plot Profile: 選択した線に沿ったピクセルの輝度値の変化をグラフで表示します。これは、画像の特定の断面の詳細な分析に使用されます。
7. 表面プロット (Surface Plot)
- Surface Plot: 画像の領域を3Dの表面として表示し、輝度値のトポグラフィーを視覚化します。
ツールバー
ツールバーは、マウスで直接選択して使用するアイコンベースのインターフェースです。
これには、画像の選択、編集、測定などに頻繁に使用されるツールが配置されています。例えば、四角形や円で表される選択ツール、直線や多角形ツール、拡大鏡アイコンなどがあります。これらのツールは、画像上で直接操作を行う際に使用され、より直感的で迅速な操作を可能にします。
今回はGUI上でツールバーを利用した簡単な解析を実行してみましょう。
ツールバーで選択した範囲のヒストグラムを作成する
File>Open Samples > Boatで以下のような船のサンプル画像を開きます。
例えば、ツールバーの左端の四角形(Rectangle)を選択します。
すると以下のように画像内で範囲を選択することができます。
次にAnalyze>Histogramを選択します。すると以下のようなヒストグラムが作成されます。ツールバーで選択した範囲のピクセルの輝度をヒストグラム化しています。
次に左上の明るい部分を選択してみましょう。
同様にヒストグラムを作成すると上記のようなヒストグラムが作成されます。先ほどのヒストグラムでは平均値(Mean)が72だったのに対して、今度は153となっており、先ほど選択した範囲より輝度の高いピクセルが多いことがわかります。
最後に
このようにFiji(ImageJ)ではGUI上でツールバーを利用しながら、インタラクティブに画像解析を行うことができます。
これまで紹介したマクロやPythonでの解析とは異なり、多くの画像に対して処理を行う場合には不向きですが、GUIでは目検で操作が行えるのでより直感的です。
ぜひ、いろいろな画像解析を試してみてください。