Protein-Ligand Interaction Profiler (PLIP)を用いたタンパク質-低分子相互作用解析【in silico創薬】

PLIP

Protein-Ligand Interaction Profiler (PLIP) は、タンパク質-リガンド相互作用を詳細に解析するツールです。本記事では、PLIPのチュートリアルにあるカテプシンとその阻害剤(PDB ID:1VSN)を例にとり、そのリガンドとの相互作用解析を行います。さらに、よくあるエラーの対処法も記載しています。ぜひご覧ください!

動作検証済み環境

Mac M1, Sequoia 15.3, メモリ 16GB

目次


1. PLIPとは?

PLIPは、PDBフォーマットのタンパク質-リガンド複合体から相互作用を自動検出するツールです。以下のような相互作用を解析できます。

  • 水素結合 (Hydrogen Bonding)
  • 疎水性相互作用 (Hydrophobic Interactions)
  • 塩橋 (Salt Bridges)
  • π-スタッキング (π-Stacking)
  • 金属配位結合 (Metal Coordination)
  • ハロゲン結合 (Halogen Bonds)

PLIPは Pythonベース で動作し、コマンドラインまたはWebインターフェースで利用可能です。ブラウザで簡単にやりたい方はこちら


以下のような論文に実際に使われているツールですので、本記事で出てきた図をそのまま掲載することも可能です。

Identification of Novel Ribonucleotide Reductase Inhibitors for Therapeutic Application in Bile Tract Cancer: An Advanced Pharmacoinformatics Study


2. PLIPの環境構築

2.0. 環境構築の手順(全コード)

#仮想環境の構築
conda create -n in_silico python=3.9
conda activate in_silico

#openbabelのインストール
conda install -c conda-forge openbabel
obabel -V

#Pymolのインストール
conda install -c conda-forge pymol-open-source
pymol -h

#PLIPのインストール
git clone <https://github.com/pharmai/plip.git>
cd plip
pip install .

仮想環境を作成し、各ツールをインストールしていきます。

詳細なコード解説は以下の通りです。

2.1. 仮想環境 in_silico の作成

conda create -n in_silico python=3.9
  • conda create -n in_silico python=3.9 は、新しい仮想環境 in_silico を作成し、Python 3.9 をインストールします。
  • n in_silico は環境名を指定し、python=3.9 は特定のPythonバージョンを選択するオプションです。
conda activate in_silico
  • conda activate in_silico は、作成した in_silico 環境を有効化し、その環境内で作業できるようにします。

2.2. Open Babelのインストール

conda install -c conda-forge openbabel
obabel -V
  • conda install はパッケージをインストールするコマンド。
  • c conda-forge は、conda-forge というチャンネル(パッケージリポジトリ)からパッケージを取得する指定。
  • openbabel は分子変換ツール Open Babel のインストール。

2.3. Pymolのインストール

conda install -c conda-forge pymol-open-source
pymol -h

2.4. PLIPのインストール

git clone <https://github.com/pharmai/plip.git>
  • git clone は、GitHubからPLIPのリポジトリをローカルにコピーするコマンド。
cd plip
  • cd plip は、ダウンロードしたPLIPのディレクトリへ移動するコマンド。
pip install .
  • pip install . は、現在のディレクトリ (.) にある setup.py を使ってPLIPをインストール。
plip --help
  • plip --help は、PLIPのヘルプメッセージを表示し、正しくインストールされたか確認するコマンド。

3. Cathepsin Kと阻害剤の相互作用解析

3.0 全コード

#pdbファイルのダウンロード
wget <https://files.rcsb.org/download/1VSN.pdb>

#PLIPの実行
plip -f 1vsn.pdb -yv

#可視化
pymol 1VSN_NFT_A_283.pse

3.1 PDBファイルのダウンロード

wget <https://files.rcsb.org/download/1VSN.pdb>
  • wget は、指定したURLからファイルをダウンロードするコマンド。

3.2 PLIPによる相互作用解析

plip -f 1vsn.pdb -yv
  • f 1vsn.pdb は、解析対象のPDBファイルを指定。
  • y は、追加の PyMOL セッションファイルを生成します。これにより、PLIP の解析結果を PyMOL で視覚的に確認・再現できるファイルが作成され、分子構造や相互作用の詳細な可視化が可能になります。
  • v は詳細(verbose)モードを有効にします。実行中により多くのログや解析の進行状況、内部処理の情報が出力され、デバッグや解析の状況把握に役立ちます

3.3 結果の確認

pymol 1VSN_NFT_A_283.pse
  • 上記のコードでpymolで解析結果を表示します。

bg_color black で背景を黒にもしてください。各結合がいい感じで見れます。

各色の意味は以下の通りです。

相互作用の種類説明PyMOLの色表現方法
疎水性相互作用 (Hydrophobic Interaction)疎水性部位同士のファンデルワールス力grey50 (グレー)点線 (dashed)
水素結合 (Hydrogen Bond)極性基同士の相互作用blue (青)実線 (solid line)
水架橋 (Water Bridges)水分子を介した結合lightblue (ライトブルー)実線 (solid line)
π-π スタッキング (平行型) (pi-Stacking parallel)平行な芳香環の相互作用green (緑)点線 (dashed line)
π-π スタッキング (垂直型) (pi-Stacking perpendicular)垂直な芳香環の相互作用smudge (スモッジ)点線 (dashed line)
カチオン-π 相互作用 (pi-Cation Interaction)芳香環と陽イオンの静電相互作用orange (オレンジ)点線 (dashed line)
ハロゲン結合 (Halogen Bond)ハロゲン原子を介した相互作用greencyan (グリーンシアン)実線 (solid line)
塩橋 (Salt Bridge)正負の電荷を持つ官能基間の静電結合yellow (黄色)点線 (dashed line)
金属錯体 (Metal Complex)金属イオンとリガンドの配位結合violetpurple (バイオレットパープル)点線 (dashed line)

分子ドッキングした後の化合物保存の注意点

分子ドッキング後に、PLIPを行おうとすると、場合によっては以下のように化合物が変形した形で出てきます。これはタンパク質と化合物のcomplexの保存の仕方を工夫することで、解決できます

以下の手順で行うと解決します。

  1. まずリガンドを先にpymolにロードしてください。
  2. 次にタンパク質をpymolにロードしてください。
  3. タンパク質がA鎖、B鎖ある場合は片方だけにしてください。
  4. File→Export Structure→Export Moleculeを押してください。
  5. 以下の画面をSelection: enabled、State:-1(current) に設定してください。

6. PDB Optionsにいき、Write CONECT records for all bonds にチェックを入れてください。

7. Save…を押します。

上記の方法で解析すると正しい形で出力されます。


まとめ

本記事では、PLIPを用いたCathepsin Kと阻害剤の相互作用解析を紹介しました。PLIPは迅速かつ詳細な相互作用解析を可能にするため、創薬研究において非常に有用です。

ぜひPLIPを活用して、タンパク質-リガンド相互作用を解析してみてください!

参考文献

GitHub – pharmai/plip: Protein-Ligand Interaction Profiler – Analyze and visualize non-covalent protein-ligand interactions in PDB files according to 📝 Adasme et al. (2021), https://doi.org/10.1093/nar/gkab294

PLIP – Welcome


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